20代・30代のキャリアアップ戦略 市場価値の高い人材であり続けるための年代別の転職術

人生100年時代と言われる中で働く期間は相対的に伸びていく傾向にあると言えます。またAI等のテクノロジーの発展により現在存在している仕事が機械に代替されていく可能性も囁かれています。そのようキャリアの不確実性が高まる中でどのように長期的なキャリアを組み上げていくべきなのか。各年代で求められていること、やっておくべきことを理解した上で40代、50代になっても自らの意思で働くフィールドを選択していける市場価値の高い人材としてキャリアを築いていくためのポイントをまとめていきます。

目次

転職市場における個人の市場価値の決まり方

「自分の市場価値を上げていきたい」「どのようにすれば市場価値が高い人材になれるのか」このような考えをお持ちの方も多いと思います。まず市場価値とはどのようなもので、何によって決まってくるのか、どうすれば上げていくことができるものなのかを図解しながら出来る限りわかりやすく説明していきます。

大前提としてそもそも転職市場における市場価値とはなんなのかを考えてみます。市場価値=年収とイメージする方もいらっしゃると思いますが個人的には転職市場において市場価値が高い状態とは、採用する企業からのニーズが高い状態だと考えています。ニーズが高ければ年収が高くなる可能性ももちろんありますし、転職時に多くの選択肢から次の企業を選ぶことも出来るはずです。そういった状態を総称して市場価値が高いとここでは定義することとします。

市場価値の高さは需給のバランスによって決まる

経済学を学んだことがある方には見たことのあるグラフかもしれません。今回はグラフを活用して市場価値の決まり方について説明していきたいと思います。縦軸の価格(市場価値)とします。本来であればここに供給曲線(どのくらいの転職者がマーケットに供給されているかの数)を示した上で価値の変動について語りたいところですが、転職市場における個人は個別性が高く、そのスキル・経験、成果・実績、人間性・スタンスが全く違うため『線』ではなく『点』で考えます。

一般的に競争市場では、市場価格は絶対的なものではなく、市場価格や取引数量は需要量の大きさと供給量の大きさの相対的関係に応じて変動し、決定されていくものとされています。それを踏まえて考えると個別性の高い転職マーケットにおける市場価値は個人の能力の希少性と企業側のニーズの強さによって決まってくると考えることができると思います。

さらに細分化してその構成要素を考えていきます。

まず個人の能力の希少性は採用する側の企業が価値認定するものなので企業の採用基準となる当該者の年齢、スキル・経験、成果・実績、人間性・スタンスがその変動要素となります。そのためスキル・経験の向上や成果・実績の積み上げによって図の①から②への動きのように市場価値が高くなります。逆に、スキル・経験、成果・実績に大きな向上、積み上げがなく年齢だけが経過してしまうと、陳腐化が進行し、②から③のように市場価値は下がっていってしまいます。

次に採用ニーズの変化についてです。まずは単純に好景気、不景気で比較して考えてみます。青点線に着目してみてください。個人の能力(希少性)に変化がなかったとしても好景気になればその価値は高まり、逆に景気が悪くなれば企業の採用ニーズは冷え込み、市場価値が下がり、希少性が高くないとそもそも転職の機会も無くなっていきます。バブル崩壊やリーマンショック、新型コロナウイルスの影響によって企業の業績が多大なダメージを受けたときにその年の新卒採用が凍結されたり、転職マーケットから第二新卒や20代のポテンシャル人材の求人が減少したりといった状態がこの典型例です。

ただし採用ニーズについては景気の良し悪しといった大局的な見方だけではなく業界・業種・企業単位といったもう少しミクロの視点も持つことも大事です。景気が悪くなると、全体的には求人数が減り、いまは転職するべきではない!という一般論が横行しますが一概に正解とは言えません。例えば新型コロナウイルスの影響によって在宅時間が増え、ECの需要が増えたり、余暇時間が増えたことによる英語学習のニーズの高まりによってスタディサプリのような学習サービスの売り上げが急増したりといったように局地的に採用ニーズが急拡大しているといった事例もあります。

このように市場価値を構成する要素はスキル・経験、成果・実績、人間性・スタンス、年齢・年代、景気動向、業界・業種別ニーズなど多種多様です。これらを踏まえた上で各年齢・年代で何をなしておくべきなのかを説明していきます。

20代前半から半ばまでの年代で転職までに意識しておくべきこと

この年代はキャリアの軸を定め、土台を作る期間と言えます。就職活動を経て、入社した会社に在籍している方も多いと思います。仕事がつまらない、やりがいがない、想定していた仕事とは違った、などという思いを抱えている人も多いでしょう。

ただしこの期間は社会人としての基礎能力や仕事にどのように向き合うかといったスタンスを醸成して行かなくてはならない期間としてとても大切です。これらは今後の社会人人生を支える素地になります。

今の仕事を反面教師にして自分がやりたいことを見つけるのも良いですし、今の仕事にしっかりと向き合った上でやりがいを見つけるのも良いです。いずれにしても自分が今後注力していくべき領域(業種や職種)に目星がつけられるようになりましょう。業種については将来的に異業種への転職も実は30代40代になっても可能性はあるので職種について特に目星をつけておいて欲しいと思います。職種は今後の年代で転職をする際に注視されるスキル、経験に直結してくるためです。

第二新卒と言われる社会人経験が3年前後までで転職を検討する人も出てくると思います。この年代での注意ポイント、ノウハウは別記事にもまとめていますのでそちらを参考にしていただき、就職活動の時と同じような間違いをしないようにくれぐれも気をつけてください。

なお、この年代の方のキャリア相談を受ける際に「市場価値」について言及される方が特に多くいらっしゃいます。本記事の冒頭にも記述していますが市場価値を高めたいのであれば希少性(代替可能性の低さ)、マーケットニーズの強さ(市場の成長や企業内におけるポジションの数)を意識してみてはいかがでしょうか。もちろんこの先の年代でどのようなプロセスでどれだけの成果・実績を出すかの方が重要ではありますが勝負していく領域を定めていくための一つの観点としてお伝えしておきます。

また、上記とは別に学歴が転職に影響するかどうかという質問もいただきます。

結論から言うと就職活動の時と同様、20代、特に第二新卒の転職活動において学歴は影響します。20代前半は特にスキル・経験や成果・実績が積み上がっていない方が多く、企業側も判断軸が作りづらいため、学歴というわかりやすい評価軸によって候補者のレベルを判断しがちだからです。

もちろん現職や前職において何をやってきたか、そのように仕事を向き合ってきたかが評価されないというわけではありませんが、他の年代と比べると学歴に対する評価の比率は大きいという事実は認識しておいた方が良いでしょう。

20代半ばから30代前半の年代で転職までに意識しておくべきこと

この年代は20代半ばまでに作った土台の上に実績を打ち立てていく期間になります。実績を作っていくためにはどこに自分が注力していくかという領域が定まっている必要があるので、前章でお伝えした通り20代半ばまでを目処にある程度定めておくことがベストです。

ただし、中には戦っていく領域を決めきれなかった人もいることと思います。その場合には社内でできるキャリアチェンジの機会を活用することもおすすめです。所属している会社の中で公募や異動を使ってやりたい方向にキャリアの軸を移していくことや、または転職をするのであればまずは20代半ばまでに培ったスキル・経験を使って転職活動を成功させ、転職先で希望の仕事にキャリアの軸をずらしていく動きをするのも良いでしょう。後者のケースの場合は転職先が異動を定期的に実施しているかどうか、また希望するポジションに動ける可能性はどの程度なのかをきちんと把握するようにしましょう。

いずれにしても早い段階で実績を出すことにフォーカスしていける状態を作るようにしてください。この年代は今後さらに大きな実績・成果を出していくために十分なスキル・経験を積むことが最重要です。そのため社内にチャンスがないのであれば社外にそのチャンスを求めるという視点も持ち合わせておくと良いでしょう。40代、50代になった時にきちんと選択肢を持てるように主たる業務におけるスキル・経験だけではなく、周辺業務に関する知見も習得できる等に積極的に経験も拾いにいきましょう。

30代半ばから40代前半の年代で転職までに意識しておくべきこと

この年代で大事なことは30代前半までに身につけてきたスタンス・スキル・経験をもとに大きな実績・成果を残していくことです。

また、例えばアサインされた仕事の中で自らが中心となって動かすということも大切です30代前半までであれば自信が主役である必要は必ずしもありませんが、可能な限り自身の主たる役割を持ち、そこで一定の成果を上げることにフォーカスしてください。肩書やタイトル(役職)は会社によって位置付けが違うのでものすごく気にしておいた方がいいというほどではありませんが、どのような役割だったのかは次の年代における転職のタイミングにおいてかなり気にされます。

また携わっている仕事の規模感にも気を配っていただければと思います。営業や事業開発、事業戦略、プロダクトマネージャーといったビジネスサイドの方であればより大きな規模感のサービスに携わることや、管理部門の方であれば管掌している業務範囲やマネジメント対象の規模などが、この先の年代でキャリアの融通が効きやすさを左右する側面もあります。

このように40代中盤以降で選択肢を広く持つためには各年代においてやるべきことをやり、身につけ、積み上げていくことが必要です。例えば同業種でなく、異業種(親和性のある隣り合わせた業界など)でも40代前半までにきちんとスキル・経験・実績・成果を積み上げてきた方であれば活躍の場は十分にあります。なお、当然のことながら表面的なスキル・経験・実績・成果ではなくどのようなプロセスで、どのように周囲に好影響を与えてきたのかといった観点ももちろん重要です。40代以降のキャリアが詰んだ状態にならないように密度の高い30代を過ごしていただければと思います。

時間は不可逆的なものです。キャリアを失敗しないために先々で求められるものを理解しながら質の高い、適切なタイミングで行動を起こし、時間密度の濃いキャリアを積み上げて行っていただければと思います。

20代・30代女性の転職・キャリア注意ポイント

男性と違い女性は転職を考える上で注意ポイントがあります。

20代・30代の女性にとってまず非常に重要なのが転職のタイミングがライフステージの変化の影響を受けるということです。特に出産のタイミングの前後はどうしてもキャリアにブランクが発生します。この点を踏まえた上で以下の注意ポイントを意識しておいていただければと思います。

  • 代替されづらいスキル・経験を積んでおく

ブランクから復帰をした時に育休・産休前に働いていた職種から別職種で復帰するというケースです。もちろん本人の意向でそのような形になっているのであれば問題はないですが、意に沿わず発生するケースもあります。企業側からするとフルタイムで勤務している社員と比較した時に6〜7掛けの時間しか働けないのであれば別の社員に担当させよう、その方が成果も出やすいであろうという発想です。産休・育休前に積み上げてきた職種からの異動は一時的なキャリアダウンにも繋がりかねません。これを避けるために従前から専門性の高いスキル・経験を積んでおくことで復帰後、時間的制約があったとしても必要とされやすい、他の誰かにポジションを代替されづらい状態を作っておくように意識しましょう。

  • 時短制度を活用した状態での転職活動の難易度は高い

2009年の育児・介護休業法の改正により短時間勤務制度の導入が各企業に義務づけられ、さらに働き方改革が推奨されている中で非常にナンセンスな話ですが、働く時間に制限がある状態での転職難易度は高いことも覚えて置いてください。企業は中途採用の際、その候補者がどれだけ貢献してくれるか、成果を残してくれるかという観点で採用の可否を決めていきます。そのような中、実態として、いまだに候補者の能力ではなく働ける時間で判断がなされているケースがあるのもまた事実です。そのため転職を視野に入れている方は働く時間に制限が出る前のタイミングで次のキャリアを考える方がベターです。機会損失を防ぐためにも、20代の早い時期から中長期の視点で自身のキャリアを考えるようにしておいてください。

また長期的に一つの会社で働くことを希望される方から産休・育休の制度の有無に関する質問をいただくことがあるのですが、この制度がない会社はありません。これは労働基準法という法律で以下のように定められています。

・使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

・使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

労働基準法第65条 第1項、第2項より抜粋

そのためそもそも産休・育休の制度がない会社というものは存在し得ないはずです。(むしろない会社は行かない方がいいです)ゆえに気にするべきポイントは制度が実際に社員に活用されているかということです。育休・産休の取得率やそこからの復帰率、実際に取得した社員の生の声を聞くことでその会社が女性の働き方に関してどのような考えを持っているかは事前に確認して置いた方が良いでしょう。

具体的な転職活動をどう進めれば良いかに関しては以下の記事を参考にしていただければと思います。転職市場の業界構造を知り、企業がどのように求人を募集していくのかといったことや転職サイトや転職エージェントを使うメリット、デメリットなどを把握いただきながら具体的なキャリアアップの実行プランを立てていっていただければと思います。

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